日本のシリコンバレーを目指す「創発」事業 (前編)
〜創発事業家 世良信一郎〜

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「あーアノ人、よく会うし、よく話に聞く。でも一体何者?」あなたの周りにもこんな人いないだろうか?今回のインタビュイー世良 信一郎さんは、編集部のアノ人だ。
少し前に取材した湘南かたせ家の野村さんが編集部主催の忘年会に呼んでくれたのがはじまり。話してみると、徳島で仕事してるとか、もう少し前に取材したフジマニの三浦さんが始めたコワーキングカフェNEKTONでイベントやってるとか。頂いた名刺には実に10個もの肩書が乗り、その全てが「創発事業」という言葉で括られている。ソウハツ?シェアカフェ??キキーキャート!?世良さん、一体何者ですか?
ちょっと直球気味に聞いてみました。

世良 信一郎(せら しんいちろう)

インキュベーター・創発事業家/株式会社イーフープ代表取締役

プロフィール) 1974年生まれ。自身の会社代表の他にも、コミュニティー運営やバー店長、さらには商工会議所講師や社団法人理事まで、創発に係る事業を多種多様に展開する「創発事業家」。意外?な前職は本文中で。

創発とプラットフォーム

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ーーいきなりですが、世良さんは一体どんなビジネスをされている方ですか?

僕のビジネスの中核は、「ベンチャー創発事業」。簡単にいうと「ベンチャー支援」ですけど、あえて「創発」という言葉を使っています。「支援」よりも、0(ゼロ)から生み出す、創造して世の中に発信するということに重点をおいています。

すでにできた企画を持っている人を支援するケースも無くはないですが、もっとヨチヨチ歩きの頃から一人前に育てる、さらに、そのために必要なプラットフォームを提供する、というのが経営理念です。

僕はこのプラットフォームを「場」の提供と考えていて、物理的な「場」を提供するコワーキング事業とそれに附随したシェアカフェ事業、人の集まる「場」としてのコミュニティー作り、それから、この「場」の延長にあるものとして、地域活性化事業をやっています。

どれも、土台部分の事業です。「地域活性化」そのものというよりは、それに繋がるための仕掛け作り、といった感じです。実際には、徳島で地域活性のプラットフォームとして、「KUUKAI」というクラウドファンディングサイトを昨年立ち上げて、そのプロデューサーとして参加したり、この「湘南Apps!」コミュニティーを主催したりしてます。
(今回の取材はNEKTON FUJISAWAで開催のコミュニティーイベント「湘南Apps!」直前に伺いました。)

なるべくベンチャーからお金を取らないモデル

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ーー実際の収益はどのように得ていますか?

よくあるVC(ベンチャーキャピタル)のように投資してリターンを取る、という方法ではなく、なるべく起業家からお金を取らない、負担の少ないモデルを考えています。

自治体の創業支援を活用するとか。例えば今、藤沢商工会議所の創業セミナーの講師をやっています。その講師としての謝金は、クライアントのベンチャーには負担の無い収入ですよね。

それから、助成金や補助金を貰えるようにクライアントに提案することもあります。実際に補助金が得られれば、ベンチャー側も資金ができるので、その際に少し頂いたり。

運営しているコワーキングの場代も収益源ですが、これはベンチャー側の直接的な負担になってしまいますね。ただ、オフィスの場所は創業には欠かせないので、なるべく軽い負担ですむように、という思いでやっています。

大手特許事務所から転身

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ーー現在のお仕事の前には何をやられていましたか?

前職は大手の特許事務所に務めていました。実は父親が代表の会社で、本当なら跡継ぎなんですが、ベンチャーの世界が面白くて自分で別の会社を立ち上げちゃいました。

ーーベンチャーの何にそんなに惹かれたのでしょう?

特許事務所に努めている時に、新規事業として「知財コンサル」事業を立ち上げることになったんです。すごい面白そうだから是非やりたいって当時のボスにお願いして立ち上げに参加させてもらいました。

そのボスがSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)の知財の非常勤講師をされてて、そのツテでSFCのベンチャー育成施設の慶應藤沢イノベーションビレッジで知財コンサルサービスを始めたんです。僕もそっちへ行って特許の相談なんかを受けながらベンチャーの世界に触れてみたら、すごい刺激的で。あ、これからはこの時代だな、って。こういう人達をサポートする仕事をしたいなって。

ちなみに、その時代に特許事務所の知財コンサルで請け負ったベンチャークライアントですごかったのは「コロプラ」ですね。コロプラは確か5年で上場したのかな。最初3人だった会社が5年で300人になるのを目の当たりにして、なんだこれは!って。これはベンチャーすごいんじゃないか!?って思って。

イノベーションビレッジでも、18、19才の子達が、「これからビジネスやります!」って言ってどんどん成長していくのを見ていて、コレは面白いなと、完全にミイラ取りがミイラですね(笑)。

そういうのを見てるうちに、自分で勝負したい!と思って独立しました。

藤沢に恩返しがしたい

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会社を立ち上げて5年くらいSFCからの仕事を業務委託で請けていました。知財コンサルの知識はあれど、ベンチャー支援についてはド素人だったのに、この期間に逆に育ててもらったという思いが藤沢にはあります。

そんな藤沢の地に恩返しがしたい、というのが、今ここでビジネスをやっている一つの大きな要因です。

持ってる感

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ーー最近のベンチャー事情はいかがでしょう?

今は第3次か第4次くらいのブーム。ブームになるとその余波が来て事件があったり、バブルが弾けたり、を繰り返してきてるんですけど、今はその中でもたぶん一番良い状態になってきてます。

ーー若者の間でも、「学校出たら会社作りたい」という風潮が大分多くなった気がしますが

日本の根本が変わってきているんだと思います。終身雇用が崩れた今、どうせ不安定なら、自分のやりたいことをやるって人が出てきておかしく無い。SFCだと学生で会社立ち上げる人も珍しく無いです。
あと、湘南や藤沢は「持ってる」感がすごく強い。

ーー持ってる感?

SFCの存在も大きいですが、何か「新しいことや面白いことが起こる空気を持ってる」感じです。
多分、この辺に住んでいる人は多かれ少なかれ、この「持ってる感」感じてるんじゃないかな。

すごく誇張して言うとシリコンバレーみたい。日本でシリコンバレーになり得る場所ってきっと藤沢や湘南なんじゃないかなって信じてやまないです。僕はこれずっと言ってるんですけど。

ーーそれは東京よりも強いと感じますか?

そうですね。確かに今すべてのものは東京に集まるけど、新しいものが生まれる力とか、人の個性が強いのってこっちの湘南や藤沢なんじゃないかなって。

東京にも確かに面白い人はいますけど、分母が大きいですからね。藤沢とか、地域活性化創発事業で関わっている徳島とか、明らかに分母は小さいけど、面白い人いっぱいいます。そういう率で考えると東京よりこっちのほうが「持ってる」人に出会える可能性高いです。

それから湘南界隈って良い意味で緩い。これ大事なことで、何か新しいことやろうとしたときに、そんなのやめろよーって周りから圧がかかって潰されるっていうのが一番ダメなパターン。藤沢あたりって、やっちゃいなよー失敗したらそれ肴に酒飲めばいいじゃん、ってそんな感覚。僕が言ってる「持ってる感」ってこういう雰囲気のことなのかも。

後編に続く

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