百年続く物語を彫り、伝えていく。(後編)
鎌倉彫「後藤久慶」三代目当主

「ここで作ってもらってよかった」ーそう思われる作品を創り続けたい。

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–最近の鎌倉彫をお求めになるお客さんの特徴や傾向についてお聞かせください。

後藤:うちの場合はフルオーダーで製作を受けることが多いです。実は、ご覧のとおり、お店にふらっと入っていただいても、その場でお渡しできる品物があまりないのです。

他のいろんなお店を回られて、既製品では自分の欲しいものが見当たらなかったから、こんなのを作ってほしいという話になって、お引き受けする場合もあります。

–どのような年代の方が多いのでしょうか?

後藤:私が始めた頃は親世代、50〜60代とかそれ以上の方がお客様として多かったのですが、最近は30代位の若い世代にまで対象を広げて、「もっと身の回りに気に入ったものを置いたらどうですか?」と、鎌倉彫のある生活をこちらから積極的に提案しています。

鎌倉彫は、飾っているだけだと、つまらない。
例えば、お気に入りのスイーツを普段のなんでもない日に、お気に入りのうつわで食べるのって、とても贅沢な時間の過ごし方だと思うんですよね。そんなことに鎌倉彫のうつわをどんどんお使い頂きたいと思っています。

実は、鎌倉彫って使っていただくほうが皆さんに手入れされるので、色艶もよくなるんですよ。置いておくだけだと、色が逆に曇ったりする。
たまに、何十年も使っている鎌倉彫を見られたお客様が、「こんなのが欲しい」とおっしゃる時があるのですが、その時には「ぜひ使って育ててください」とアドバイスしています。(笑)

それと、最近の若い人には、季節を問わない通年で使えるものが人気ですね。
花とかだとその季節固有になってしまうので、無地に近い柄、例えば刀痕のみを彫ったものなどが、最近人気です。

 

なぜ、鎌倉彫は百年持つのか?私はそこを改めて考えるんです。

写真:鎌倉彫 火鉢(ワインクーラー)

写真:鎌倉彫 火鉢(ワインクーラー)

–鎌倉彫で作ったユニークな作品とかあればお伺いさせてください。

後藤:これ鎌倉彫の火鉢なのですが、ワインクーラーとして使っています。火鉢って、最近のご家庭では使わなくなったのですが、目で見てもあったかい気持ちになる、おもてなしの調度品だと思うんですよね。それを夏はワインクーラーとして使うと、パーティーの時にも話題になるかな、と思って提案しています。

他には、仏壇も作ったことがあります。本来の姿に戻った仕事ですが。
あるお客様が、浄土真宗なので金仏壇の仕様なんだけど、どうも派手で自分の家の雰囲気に合わないから、地味でしっくりくるものを作って欲しい、と依頼されたことがありました。
具体的には、仏壇の内側に漆で中塗りまでした後に金箔を貼り、更に上から漆を塗って仕上げました。また、お客様のご要望に合わせて香炉、花器、燭台の三具足を家紋に併せて梅の形にデザインして、ユニットのメンバーに鍛金技法で銅製で制作してもらいました。
指物の職人と一緒に、引退した職人さんの家に家に行って話を伺い、試作品を何度も作り直して約2年かかって作りました。

–鎌倉彫といっても、いろんな形があるんですね。

後藤:我が家に伝わる鎌倉彫には、ひとつひとつに作者の思いが込められていると思うんです。

それを私は大事にしていきたいと思うし、その時のいろんな想いや物語をひとつひとつ形にしていきたいと思っています。
日々の暮らしでどんどんお使いください、という提案だけでなく、そういったところも丁寧に織り込んでいきたいと考えています。

それと、よく、鎌倉彫は百年持ちますよ、という話をします。これは明治時代に100年の保証書をつけて販売していた、当時からの言わばセールストークなんですけどね。
そこで私は、なぜ百年持つのかと改めて考えるんです。
その時だけの手間や利益を考えて、漆塗りの回数を減らしたり、質の悪い木を使ったりしたら百年なんて持たない。
あとあと後ろ指を差されてしまう。それは代々受け継いできた仏師としての誇りだと思うんですよ。
先人たちがきちんしたと仕事をしてきたから、今の仕事ができる。そこを私もちゃんとしなきゃ、と思っているんです。
伝統で大切なことは、なぜ消えずにそれが残ってきたのか、その理由を考え続けていくことなんじゃないかな、と思うんですよね。

 

鎌倉彫の新しい可能性に挑戦し続ける。

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–鎌倉彫とは別に、本名の「後藤慶大」でも活動されていらっしゃいますが、具体的にはどのようなことをやられているんでしょうか?

後藤:個人では鎌倉彫を元に新たな創作をしています。また、伝統工芸や彫刻、現代美術といった別々の分野で活動する四人からなるアートユニット「eventum(エヴェントゥム)」というグループの代表をやっています。

昔、ある企業から持ちかけられた鎌倉彫を目玉にした展示企画の話がきっかけで、鎌倉彫だけでなく、いろんなアートとのコラボをしようと私自身が、面白そうな作家さんに声をかけていた時期があったんです。結局、紆余曲折あってその企業の企画はなくなったんですが、その時に声をかけた今の「eventum」のメンバーと、我々ならではの面白いことができるんじゃないか、と話が盛り上がって、それから定期的に展覧会をするようになったんです。
「eventum」のメンバーは、私のほか、彫刻の齊藤寛之氏、美術家の小林正樹氏、金属造形作家・デザイナーの福成三太氏という多彩なメンバーで構成されています。

–今回もちょうど「eventum」のイベントが開催されていますが、見どころを教えていただけますか?

後藤:毎回、季節の行事に絡めた展示を「見立て」の手法をつかって行っているのですが、今回は『夏の支度と見立て七夕』展と題しまして、それぞれの作品を天の川や、織姫、彦星に見立てた展示にしています。今回はいつもの4人にプラスして、ゲスト作家として現代美術の吉田樹人氏も参加していただき、和室の展示空間に伝統工芸の鎌倉彫と風変わりなアートが展開しています。

とても面白い展示になっていますので、鎌倉にお越しの際はぜひお立ち寄りください。(※編集部注:『夏の支度と見立て七夕』展は、7/5に終了いたしました)

–鎌倉彫、eventumと、様々な活動を展開されていると思いますが、さらに今後挑戦していきたいことって何かありますか?

後藤:海外に出てみたいな、と最近思っています。鎌倉彫の良さをもっと外国の方に知っていただけければと思っています。以前、フランスに行ったときに、直感的に「フランス人の感覚に鎌倉彫は合うんじゃないか」と思ったんですよね。

もちろん、フランス語も話せないし、そんな人脈はまだないのですが、これから海外向けの発信は何らかやってみたいと思っています。

後は、今の鎌倉彫の領域にとどまらず、僕の仕事が活かせるシチュエーションをもっと広げられたらいいな、と思っています。
例えば、家の空間、床の間やドアなんかに鎌倉彫のエッセンスを使ったデザインをしてみるとかですね。
キッチンカウンターとかにワンポイントの彫り物があったら、かっこいいかも、とか色々と新しいことを考えたりしています。(笑)

–海外や新しい領域での活動もとても可能性を感じますね。ますますのご活躍を期待してます!

 

インタビュー締めのひとこと

——後藤さんにとって湘南で働くとは?

後藤:長い歴史の中に生きるということを踏まえ、(↓)

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(おわり)


・鎌倉彫 後藤久慶 Facebookページ
https://www.facebook.com/gotokyukei

・Art Unit “eventum” Official Website
http://eventumarte.jimdo.com

 

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