「ブルーフラッグ」を掲げ、湘南の未来を切り拓く!(後編)

松下政経塾に入塾。湘南地域の活性化に向けて、自らフィールドへ。

011

--その後、神奈川県庁勤務から、松下政経塾へ入塾されますね。このあたりはどのようなお考えだったんですか?

片山:2009年、配置転換で神奈川県庁へ出向になりました。総合政策課で県の総合計画の策定や管理の仕事をしました。ここでは県知事のトップ判断も含め、県の政策決定プロセスを間近で見ることができたんです。とても貴重な経験でした。
当時の県知事は松下政経塾出身で現参議院議員の松沢成文さん。松沢さんに憧れて、自分も松下政経塾への入塾に挑戦してみることにしました。
松下政経塾の塾生は、すごい経歴の方ばかりで、普通なら自分のようなキャリアはダメだと思ったのですが、「現場での経験と強い想いは誰にも負けないぞ」と思い、応募締切の1週間前にすべり込みで入塾願書を提出したんです。そしたらご縁があって合格することができました。
しかし、入塾するためには10年以上勤めた市役所を辞め、3年間の寮生活をしなければいけません。いざ合格が決まって家族や職場に相談したらみんな大反対。母親にも将来が心配だと泣かれちゃって。でも当時93歳だった祖母だけは賛成してくれたんです。
「松下幸之助さんの教えを学んで、世の中のためになるような人物になりなさい」と。そこで迷いが吹っ切れました。

--松下政経塾ではどのような活動をされていたんですか?

片山:松下政経塾では、自分が一生かけてやり遂げるテーマを求められました。それを実現するために、実際にフィールドに入る「実践課程」というものがあります。
例えば、「教育」というテーマだったら学校現場に入る、「農業」だったら農業をやる、「安全保障・外交」だったら海外に行くとか。自分は、本気で取り組めることは何かと考えた時に、テーマを「湘南の海」に決めました。

--ここでもまた原点に戻られたんですね。

片山:はい。やっぱりサーフィンが大好きだったので(笑)。
「海」がテーマなら本気で取り組めると。それで、まず「湘南の海が抱えている課題」について、漁師、海の家、商業者、環境NPO、研究者、自治会など、100人くらいの方にご意見を伺いました。
そこから見えてきたのは、それぞれが自分の立場を中心に問題を見ているということ。
例えば、極端に環境だけを配慮すれば観光客の海岸への立入を禁止にすべきかもしれませんが、観光や商業といった経済的観点から見ると現実的ではありません。環境、経済そして防災が共存する海でなくてはいけないのです。バラバラに取り組んでいるから、それぞれの課題が解決しないんだと。

 

 

「ブルーフラッグ」を湘南から。みんなが共有できるビジョンを創る。002

 

--具体的にはどのような活動をされたのでしょうか?

片山:「きれいで安心安全で活力がある湘南の海」を目指したいという想いは、海に関わる人たちの共通の願いです。様々な立場はあるけど、必要なのは全員が共有できる明確なビジョン。だから、まずはみんなが共有できるビジョンを掲げようと思いました。
そこで、私は「湘南ビジョン研究会」という任意団体を立ち上げ、「湘南の海で日本初のブルーフラッグ取得」を提唱しました。

--ブルーフラッグとは何でしょうか?

片山:ブルーフラッグとは、世界46カ国、約4000のビーチやマリーナで取得されている国際的な環境認証基準です。
具体的には、水質、環境、安全、景観、教育などに関する30項目以上の基準をクリアすると、ビーチに正に「青い旗」を立てられるというものです。海外では、ブルーフラッグ取得後、海岸のブランドが向上して観光客が増え、地域経済が活性化した事例がたくさんあるんですよ。
でも、日本ではまだ取得事例がありません。そこで、湘南ビジョン研究会では、「湘南の海で日本初のブルーフラッグ取得」という目標を掲げ活動を始めました。

--なぜ、ブルーフラッグを目標にしたんですか?

片山:海岸のごみ問題を始め、湘南の海をもっとよくしたいとみんなが思っている。でも、何が本当の課題なのかは誰も分かっていない。だから、抽象的なスローガンになってしまって前へ進めていないのが現状。
ブルーフラッグは、客観的かつ具体的に海の課題をあぶり出せるから、みんなが納得して、その課題に取り組めるようになる。それがブルーフラッグのいいところなんです。
具体的には、30項目以上の基準に挑戦する過程で、クリアできていない基準が明らかになる。これが湘南の海が抱えている本当の課題だと思うんです。そうすると、この課題をクリアするために地域の市民が動き、市民レベルで解決できないことに対して政治家が動き、政治家が動けば行政が動き、行政が動くことで予算が付くのです。

--最初は片山さん個人の思いからはじまった活動が、今は50名以上参加されている団体に成長していますが、どうやって参加者を募っていったのでしょうか?

片山:仲間に恵まれました。地元の鵠沼中学の同級生に「湘南ビジョン研究会をやりたいんだ」と相談したら、「片山が言うならしょうがないな」みたいな感じで手伝ってくれて。(笑)。
最初は5、6人でビーチクリーンから始め、次に「湘南の海を考えるミニフォーラム」を開催しました。
ミニフォーラムでは専門のパネリストをお招きし、海岸ごみ、海岸侵食、津波、漁業、自然エネルギーなど、毎月テーマを変えて海に関する問題を議論していきました。その結果をフリーペーパー「読む湘南」に掲載し、毎月1000部発行していました。友達の居酒屋とかサーフショップとかに置いてもらっていましたね。
そうするうちに、湘南のために何かしたいという想いを持っている人たちが徐々に集まってきてくれたんです。気づいたら湘南ビジョン研究会のメンバーが50人くらいになっていました。
また、ブルーフラッグの活動とあわせ、湘南の資源である「海」を最大限に活かした理想のまちづくりを考えました。具体的には、10ヶ月間で延べ80回にもわたる会議を実施し、10年後の湘南のまちづくりビジョン「湘南都市構想2022」を策定しました。
私の松下政経塾の3年間の成果発表会にあたる「湘南未来フォーラム2013in江の島」の場で最終提言発表を行ったのです。結果、500人もの方に集まっていただきました。

--メンバーとの関係作りでは、どのような点に気をつけていますか?

片山:これまで、プロジェクトや研究会のリーダーとして数多くの失敗をし、会を運営できず、つぶしてしまったこともありました。これらの経験を振り返ると、自分の思いが強すぎて先走ってしまい、まわりを見る余裕がなかった。メンバーが自分から離れていってしまったのも、当然だったなと今は思います。
そこでの気づきは、リーダーは常にメンバーに対して「1人対1人」という姿勢でいること。「メンバーのみなさん」ではなく、「○○さん」と、一人ひとりに声をかけ、その人を尊重してコミュニケーションをとるということだと思っています。市民活動は50人いたら50通りの参加目的がある。ボランティアで給料をもらっているわけではないので、一人ひとりの思いを理解して、その思いを実現させてあげられるような努力が必要だと思っています。

--一人ひとりとコミュニケーションを取る際、ネットをどのように活用していますか?

片山:メンバーは全員仕事を持っているので、メーリングリストを使って効率的に事務連絡や作成書類を共有していますね。その時大切なのは、誰宛てのメールなのかを明確にすること。送られた相手も自分宛てだと分かればしっかり内容を確認するし、必ず返事も来ますね。
全員で共有すべき書類はMicrosoft One Driveに保存して各メンバーがいつでもアクセスできるようにしています。最近は、Facebookも使っていますね。メンバーの活動状況や写真をFacebookグループで共有しています。「いいね」ボタンとか押されると、みんなのモチベーションが上がりますよね。
チームごとの普段の細かいやりとりは、SkypeやLINEも活用しています。まだ使い方が整理できていないところもありますが、より良い方法を見つけるために試行錯誤しています。
それと、実は僕、電話を結構使ってるんです。相手が出なくても留守電に入れるんですよ。メールだけでは伝わらないものもある。電話だと、相手の声の調子や話し方でどんな状態か分かるし、こちらの思いも伝えられる。「うざいな」と思っているメンバーもいるかもしれないけど(笑)、僕はそれが大切だと思っているんです。
でもやっぱり、直接会うことが一番大切だと思うんです。普段の活動になかなか参加できないメンバーがいたら、ちょっと時間が空いたときに会いに行くとか。なかなか難しいけど心がけています。

--確かにネットだけで済まさずに、そういったアナログ、フェイスツーフェイスのコミュニケーションも大切ですよね。

片山:そうですね。アナログでのコミュニケーションを大切にしつつ、一方でNPO活動や地域活性化にもっとネットを活用して、これまでに無かったような斬新な活動を展開していきたいと思っています。

--松下政経塾を卒業されて、今後はどのような活動をされるお考えですか?

片山:現在は、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程(SFC)に在籍していまして、専門は公共政策・市民自治です。
SFCの強みであるソーシャルイノベーションやネットワークコミュニティを学び、これを湘南ビジョン研究所のNPO活動に活かしています。
湘南ビジョン研究会は、2013年12月にNPO法人格を取得し「湘南ビジョン研究所」となりました。NPO法人としては、金銭的な余裕もなくまだまだ力不足な存在ですが、今年度は「ブルーフラッグ」プロジェクトに集中して具体的なアクションを起こし、少しずつでも成果を残していきたいと思っています。今年は8月から「湘南の海を考えるミニフォーラム」を「ブルーフラッグcafé」にリニューアルして再開させます。
今後も、「ブルーフラッグ」活動をはじめ、企業や他のNPOと連携して、湘南地域の「政策プラットホーム」として、大きなうねりを作っていきたいと思っています。是非ご期待ください!

--はい、今後のご活躍を期待しています。本日はありがとうございました。

 

インタビュー締めのひとこと

--片山さんにとって湘南で働くとは?

 

(おわり)

SNSでもご購読できます。

コメントを残す